実験操作で分析をするとき、非常に多くの研究室で利用するものが吸光度です。光がどれだけ透過するのかを測定することで、溶液中に物質がどれだけ存在するのかを測定するのです。または、どれだけ反応が進んでいるのかを確認することもできます。

生物系の実験をする場合、吸光度を利用した分析を行うことが頻繁にあります。要は、光がどれだけ透過するのかを測定し、これによって化合物や酵素の働きを確認したり、物質の濃度を測定したりできるようになります。

光がどれだけ透過するのかを確認すれば、「濃度の濃い薄い」を判別できます。当然ながら、色が濃ければそこにはより多くの物質が存在すると推測できます。

「紫外可視吸収スペクトル」や「ランベルトベールの法則」などの言葉があると、吸光度の概念や原理は非常に難しく思ってしまいます。そこで、要は「濃度が濃ければ光を透過しにくくなる性質を利用し、溶液中の物質量を測定する手法」と理解すればいいです。

構造式に共役があると光を吸収する

私たちの周りには、色のついている液体が非常にたくさんあります。なぜ、こうした色がついているのでしょうか。それは、何かしらの化合物が含まれているからです。

何も化合物が含まれていない場合は、純水なので透明です。一方、そこに何かしらの有機化合物が含まれた結果、液体は着色します。色のある液体というのは、必ず何かしらの化合物が含まれていると理解しましょう。

色のある液体では、重金属を含む化合物、または共役構造を有する有機化合物が必ず入っています。なお色がある液体では、多くは共役構造を有する化合物が含まれます。紫外線や可視光を吸収する化合物だと、例えば以下のような構造式になります。

例えば日焼け止めクリームであれば、紫外線を吸収する物質が製品に含まれています。紅茶であれば、ポリフェノールという有機化合物が多く含まれています。これらの化合物が含まれている結果、紫外線を吸収したり、溶液に色があったりします。

なお、共役構造としてはベンゼン環が有名です。ベンゼン環を有する化合物だと、どれも紫外可視吸収スペクトルが観測されます。ベンゼン環の場合は紫外線を吸収するため、紫外可視吸収スペクトルのピークが表れるというわけです。

光の透過率(吸光度)の違いを測定する

着色があるというのは、有機化合物が色を吸収していることを意味しています。化合物が光を吸収するからこそ、私たちは液体に色が付いていると認識します。

有機化合物が紫外線や可視光を吸収すれば、その分だけ光の強さは弱まります。また色の濃い溶液に光を当てると、その分だけ出てくる光は弱くなります。

溶液に含まれる化合物の濃度が高くなるほど、多くの光を吸収するようになり、出てくる光の強さが弱まることは容易に想像できます。

例えば黒色の遮光シートを利用すれば、すべての光を吸収してくれます。ただ黒色が薄ければ、光が透過してあなたに届きます。一方、黒色が濃くするほど多くの光を遮ることができます。これと同じように、紫外可視吸収スペクトルでは光の透過率に着目すると考えましょう。

紫外可視吸収スペクトルが表れる原理はエネルギーの放出にある

それでは、なぜ有機化合物は紫外線(UV)や可視光(VIS)を吸収するのでしょうか。物質によって、どの波長の光を吸収するのか異なります。そこで、溶液が吸収する波長を記したものが紫外可視吸収スペクトルです。

どの光を吸収し、紫外可視吸収スペクトルとして表れるのかは溶液に溶けている化合物に依存します。ただ、なぜ紫外可視吸収スペクトルが表れるのでしょうか。

これには、電子の励起状態が関係しています。

原子は電子をもっており、電子は安定な状態(基底状態)となっています。ここに外からエネルギーを加えると、一時的に電子は高エネルギー状態となります。これが励起状態です。

本来の軌道ではなく、エネルギーの高い軌道へ電子が移動することを電子遷移といいます。光エネルギーが化合物に当たることで、電子遷移を起こします。ただ分子はエネルギーの高い状態を嫌うため、電子遷移したあと、元の安定状態に戻ろうとします。安定状態(基底状態)に戻るとき、分子はエネルギーとして光や熱を放出します。

光を溶液に当てると、透過後に光が弱まっているのは理由があります。化合物が光エネルギーを吸収した後、熱や光としてエネルギーを放出するからです。当然、溶液が濃いほど光が吸収されるため、透過後の光は弱くなります。

黒色の遮光シートについても、多くの光を遮った後の遮光シートは熱いです。これは光エネルギーを吸収し、熱として多くのエネルギーをため込むことになるからです。

吸光度には濃度と距離が関係している

この性質を科学実験で応用します。光が液体を通過するとき、どれだけ光が吸収されるのかを測定することで、含まれる物質の量や反応の進行度合いを測るのです。

吸光度には、濃度と距離の2つが関係しています。濃度が濃くなれば、それに伴って光が多く吸収されるようになります。それに加えて、同じ濃度の溶液であったとしても、距離が長くなるほど光が吸収されるようになります。

例えば光が透過したあと、光の強さが50%に下がる溶液があるとします。この溶液の長さが2倍になった場合、透過後の光は25%になります。

最初に50%の光が吸収され、さらに次に50%の光が吸収されます。その結果、「0.5 × 0.5 = 0.25(25%)」となります。距離が増えることで指数関数のように光の強度が弱まると理解しましょう。

ランベルトベールの法則を理解する

ここまでの内容を学べば、ランベルトベールの法則を理解するのは簡単です。ランベルトベールの法則では、難しい記号や計算式を利用して説明しようとする人が多いです。ただ、これらは意味がありません。

ランベルトベールの法則では、2人の名前が合わさっています。

濃度が一定のとき、吸光度は距離(光が透過する長さ)に比例することが発見されました。これをランベルトの法則(ブーゲの法則)といいます。

一方、距離(光が透過する長さ)が同じの場合、吸光度は溶液の濃さ(溶質のモル濃度)に依存します。これをベールの法則といいます。

ランベルトベールの法則とは、ランベルトの法則(ブーゲの法則)とベールの法則を組み合わせたものです。ただ、その内容は「溶液が濃いほど、距離が長いほど、透過後の光が弱まる」という当たり前のことを述べているにすぎません。

透過率ではなく、吸光度を利用する

それでは、透過率ではなく吸光度(A:Absorbance)を利用する理由としては何があるのでしょうか。これは、透過率ではグラフが直線にならないからです。

出力した光の強度(I0)と透過後の光の強度(I)を測定すれば、透過率を容易に測定できます。透過率は以下のようになります。

ただ、透過率で数字を出したとしてもグラフは曲がります。先ほど距離が長くなると、指数関数のように光が弱くなると説明しました。50%の透過率の場合、距離を倍にしたら透過率0になるのではなく、透過率は25%になります。

そこで透過率ではなく、対数にします。また対数にマイナスを加えると直線のグラフになります。

吸光度は透過率を対数にして、マイナスを加えたものになります。吸光度を利用するからこそグラフの線がまっすぐになり、実験データを読めるようになります。

またランベルトベールの法則は他にも式を利用します。以下の式になります。

  • A(吸光度:Absorbance) = εcl
  • ε:モル吸光係数
  • c:溶液の濃度
  • l:光の距離

ランベルトベールの法則では、吸光度は濃度と距離に比例することを解説しました。そのため、溶液の濃度(c)と光の距離(l)を掛けることで吸光度を算出できます。式だけみると難しそうですが、非常に簡単な計算式だといえます。

なお、ε(イプシロン)はモル吸光係数と呼ばれます。化合物固有のものであり、既に決まっている数字だと理解しましょう。cを1mol/L、lを1cmにしたときに出される吸光度がモル吸光係数εです。

この数式を最初に見せられても内容を理解することはできません。ただランベルトベールの法則や吸光度の意味を理解すれば、簡単に理解できるようになります。

紫外可視吸収スペクトルで測定波長を決める

これらが、ランベルトベールの法則による、吸光度を用いた測定方法の原理です。それでは、どのようにして分析をすればいいのでしょうか。

まず、対象の化合物がどのような光を吸収するのか知らなければいけません。そこで、紫外可視吸収スペクトルを見るようにしましょう。機械によって紫外線や可視光を当てることにより、紫外可視吸収スペクトルが表れるようになります。以下のような感じです。

紫外可視吸収スペクトルのデータから、どの波長の光を実験で利用するのか決めましょう。

ただ通常、吸光度が最も大きくなるポイント(波長)を利用します。光を吸収しやすいからこそ、実験によってデータを得らえるようになります。

吸光度を測定すれば、溶液の濃度が分かる

紫外可視吸収スペクトルによって利用する波長が決まったあと、次の実験操作としては何をするのでしょうか。

実験内容は人によって異なります。ある物質の濃度を知りたい人がいれば、反応の進行度合いを知りたい人もいます。ただいずれにしても、吸光度を測定すれば溶液の濃度を算出できます。その後、データを出します。

細胞実験を含め、生化学に関わる研究室では、吸光度測定を利用することが頻繁にあります。例えば以下のような小さいプレートを利用し、発色の度合いを調べます。

どれだけ発色したのかによって、溶液中に含まれている物質の濃度が分かります。吸光度を測定するだけのため、出てくるデータは数字(吸光度)の羅列です。そこで吸光度の数字を整理することで、あなたが導き出したい数字を出せるようになります。

物質の定量や酵素反応、細胞の利用など、色の違いを利用した科学実験は非常に多くの研究室で行われています。紫外線の吸収や発色物質を利用することで、そこにどれだけ化合物が存在するのか光の吸収度合いで測定できます。そこから、実験データを集められるようになります。

例えば、グルコース(糖)と反応することで発色する試薬があります。血液を採取し、試薬と反応させることで発色させれば、色の濃さによって血糖値を測定できます。こうして吸光度の測定は医療に応用されています。

他にも、ランベルトベールの法則を利用した科学実験や測定は、あらゆる場面で応用されています。光の透過率として吸光度を測定するだけですが、私たちの生活のあらゆる場面で利用されている測定技術の一つです。

タンパク質など、それ自体が光を吸収する場合はよくある

なお、測定するにしても物質自体が発色することはよくあります。色素を有する化合物は少ないですが、紫外線を吸収する化合物は非常に多いです。前述の通り、共役構造をもっていたら紫外線を吸収します。

例えばタンパク質では、紫外可視吸収スペクトルが見られます。タンパク質にはペプチド結合があり、これに関する紫外線の吸収があります。

またタンパク質の中には芳香族アミノ酸(チロシン,トリプトファン)があります。構造式の中にベンゼン環をもつため共役構造があり、紫外線を吸収します。そのため、吸光度の測定をするとタンパク質の濃度を推測できます。

・吸光度の測定では紫外線以外の利用が一般的

なおタンパク質を含め、非常に多くの有機物質が共役構造を有し、紫外線を吸収します。そのため吸光度を用いた分析をするとき、私たちの目に見える光(可視光)を活用するのが一般的です。

光源として紫外線を利用してもいいですが、共役構造をもつありとあらゆる有機化合物が紫外線を吸収します。そのため溶液中に複数の物質が混じっている場合、あなたがターゲットとする化合物だけでなく、その他の物質も紫外線を吸収してしまい、正しいデータを得られません。

そこで他の光(目に見える色)を利用します。例えば、試薬と反応することで赤色となると仮定します。そこ後、光源から光を当てます。すると、試薬によって赤色に染まった化合物だけを測定できます。赤色の「濃い薄い」によって、化合物の濃度を測定できるようになります。

目に見えるように着色する試薬を活用することで、多くの生化学実験にて紫外可視分光法が役立ちます。

紫外可視分光法での吸収スペクトルや吸光度の原理を理解する

紫外可視分光法を利用し、紫外可視吸収スペクトルを利用することで、対象の化合物がどのような波長の光を吸収するのか分かります。その後はランベルトベールの法則を利用し、吸光度を測定すれば、目的とする数字を導き出せます。

ランベルトベールの法則について、数式だけ見ても原理や意味を理解することはできません。また、難しい数式を使う意味はありません。吸光度の概念というのは、掛け算と対数を知っているだけで理解できます。

これら吸光度測定は実験室で利用するだけでなく、あらゆる研究施設で利用されます。これには行政機関や病院など、非常に多くの機関が含まれます。光の吸収度合いを調べ、ターゲット化合物の濃度を導き出すのは非常に簡便であり、さらには一般的な手法だといえます。

吸光度の測定は非常に多くの場面で活用されます。吸光度を測定することで、目的とするデータを導き出せるようになりましょう。