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神事で重要な日本酒と中国から伝わった麹の技術

 

酒と歴史との関係は深いです。神事に酒が用いられてきたことから、酒には不思議な魔力があったと考えられていました。

 

例えば、日本最古の歴史書として「古事記」が知られています。他にも、「日本書紀」や「万葉集」などは同じころに書かれた古い書物として有名です。これらの本では、酒は「クシ」と呼ばれていました。「サケ」ではなかったのです。

 

クシという言葉は、薬という意味で用いられていたと考えられています。また、クシには「不思議である」という意味もありました。そのため、人を酔わせる酒には、普通では考えられない作用があると思われていたのです。

 

 ヤマタノオロチと酒
古事記は712年に完成されたといいますが、ここには神話が書かれています。特に、ヤマタノオロチが登場する出雲神話は有名です。日本神話に登場する伝説の大蛇がヤマタノオロチです。

 

スサノオノミコトが島根県の出雲地方を訪れたときのころです。泣き崩れている老人夫婦を見つけます。泣いている理由を尋ねると、「夫婦には8人の娘がいたが、毎年、8つの首と8つの尾をもったヤマタノオロチという大蛇がやってきて娘を食べていくのだ」といいます。

 

そして、今年もヤマタノオロチが来る時期がやってきます。そのため、最後に残った末娘が食べられてしまうというものです。

 

これを聞いたスサノオノミコトは大蛇の退治を決心します。そのために、まず娘を櫛に変えて自分の髪に隠し、老夫婦には7回絞った強い酒を造らせて8つの門の前に酒樽を置いておくように命じました。このときの酒を八塩折之酒(やしおりのさけ)といいます。

 

そこでヤマタノオロチが登場しますが、酒を飲ませて眠らせることに成功します。こうして、大蛇の体を切り刻んで退治したのです。

 

このように、神話の世界でも酒が登場します。酒が不思議な力をもたらすことから、神話でも重要な要素であったことを伺えます。また、これだけ古い書物に酒が登場することから分かる通り、当時から多くの人が酒に親しんでいたといえます。

 

 中国から伝わったといわれる麹
日本酒造りでは、麹(こうじ)が欠かせません。麹はデンプンを糖に変える働きがあるため、酒造りに必須の原料です。麹があるからこそ、発酵を行うことができます。古事記には麹を用いて酒を醸造し、天皇に献上したとあります。つまり、麹による酒造りは、このころから行われていたことが分かっています。

 

麹については、中国から伝わってきたとされています。ただ、日本酒造りをみると、中国で行われている酒造りとはまったく異なる製法です。

 

中国では、小麦粉が主な原料です。これをこねて煉瓦のようにした後、リゾープス菌という微生物を増やして麹を造ります。一方、日本では蒸した米を使用します。米に菌を増やすことで麹を造ります。中国と日本では、麹を造るための原料や菌種も異なるのです。

 

こうした違いから、麹は中国から伝わったという説が有力であるものの、蒸し米を用いた麹技術は日本独自であるという説も根強くあります。

 

いずれにしても、このようにして奈良時代(710~794年)にかけて日本酒造りの基礎が少しずつ築かれていったことだけは確かです。人の唾液を用いてデンプンから糖に変える「口噛み酒」ではなく、細菌の力を用いた技術へと転換していったのです。


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