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漆芸による装飾の種類:加飾について

 

漆器

漆器といえば、漆を用いることで黒色や朱色で統一された作品を思い浮かべる人が多いです。

 

事実、漆器は一色だけを使用した、光沢のある美しい仕上がりになっているものが大多数です。下手に装飾を施さない方が、その形の魅力を最大限に引き出すことができます。

 

これは、陶磁器などにも同じことがいえます。例えば、日本の伝統工芸品として有名な備前焼であれば、土を目的とする形に仕上げた後はそのまま焼き上げます。

 

備前焼では、釉薬(ゆうやく:陶器の表面を覆うガラス質のもの)は使いません。こうして、素材そのままの色合いを出します。

 

ただ、漆は塗った物質に光沢を与えて強固にするだけでなく、物質と物質をくっつける作用も有しています。この性質を利用して金粉を付着させたり、貝を埋めたりして豪華に見せようとするのは、人間が作る作品として当然の流れであるといえます。

 

こうして、漆塗りではさまざまな装飾が施されるようになります。このように、漆器に装飾することを加飾(かしょく)といいます。ここでは、加飾の種類について簡単に触れていきます。

 

 蒔絵(まきえ)
漆芸の中でも、最も有名な装飾方法が蒔絵(まきえ)です。蒔絵とは、漆で絵を描いた後、完全に乾かないうちに金粉や銀粉などを蒔きつけることで絵を表現する手法のことを指します。漆を塗った部分にだけ、金粉などが付着するようになります。

 

一度乾くと、漆が再び液化することはありません。そのため、一度でも金粉や銀粉が付けば、摩耗して削れない限り絵が消えることはありません。

 

 螺鈿(らでん)
夜光貝など、貝の中には美しい光沢を放つものが存在します。そこで、そのような貝を細かく割り、漆が乾かないうちに作品の表面に貝を付着させたものを螺鈿(らでん)といいます。

 

漆によって描いた模様に対して、金粉や銀粉を付着させれば蒔絵になり、貝殻を付着させれば螺鈿になるということです。

 

実際に貝を付けるときは、あらかじめ板状に加工しておきます。また、漆器に貝を付けた後に、漆を塗り重ねて磨くことで、デコボコしないように仕上げます。

 

 沈金(ちんきん)
彫刻刀などで漆器の表面を削り、そこに漆を刷り込ませます。余分な漆を紙でふき取った後、今度は金箔や銀箔を貼り付けます。

 

ここで乾燥させると、彫刻刀で削った部分(漆を刷り込ませた部分)の金箔だけが強固にくっついていることになります。そこで余分な箔を取り除くと、きれいな絵が浮かび上がります。このような手法を沈金(ちんきん)といいます。

 

 平文(ひょうもん)・平脱(へいだつ)
薄い金属の板を目的とする絵柄に切り取った後、漆器に張り付ける装飾法を平文(ひょうもん)、または平脱(へいだつ)といいます。

 

平文では、最初に金や銀の薄い板を切り出すことで、模様を形どった板にします。その後、これを漆器の表面に張り付けます。張り付けた後、さらに漆を上から塗って磨く作業を行います。すると、光沢のある文様が浮かび上がるようになります。

 

 漆絵(うるしえ)
色の付いた漆を用いることで、絵を描いたものを漆絵といいます。中国でも、赤や黄、緑などの漆を用いて絵を描いた作品が多く残っています。

 

金や銀を使った蒔絵に比べると地味であるため、昔の上流階級の人たちは漆絵よりも蒔絵の方を好んだとされています。

 

 彫漆(ちょうしつ)
漆は何回も塗り重ねるものですが、このときの漆による層はかなり薄いです。ただ、これを何百回も繰り返していくと、数ミリの厚さにまで成長します。この塗り重ねた漆に対して、彫刻することで文様を作ることを彫漆(ちょうしつ)といいます。

 

もちろん、漆を何百回も塗る作業はかなりの重労働です。今では機械によって塗り重ねることが可能ですが、昔の人はすべて手作業で行っていました。

 

このように、漆器には多くの装飾方法があります。黒色や朱色だけの漆器も美しいですが、これらの装飾によって独特の雰囲気を出す漆器も違った味わいがあります。漆器には他にも装飾法が存在しますが、ひとまずここで述べてきた装飾法を理解しておけば問題ありません。


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